HPE SimpliVity with VME (VM Essentials) の2ノードクラスタを顧客先に導入する際、ほぼ確実に担当者から次のように要望されます:

「新しく導入した高スペックなSimpliVityサーバー2台の中に、Arbiter(仲裁者)VMも一緒に乗せて全部動かしてください。」

しかし、現場を知るインフラエンジニアであれば、この要望には 2つの重大なジレンマが存在することに即座に気づきます。


1. 現場のジレンマ:『鶏と卵の矛盾』と『ライセンスの罠』

ジレンマ1:SimpliVityストレージ作成前にArbiterが起動していなければならない

2ノードのSimpliVityクラスタは、展開ウィザードを実行する前にArbiter IPとの通信が確立していなければクラスタ作成を開始できません。まだノード初期化も終わっておらずストレージプールも存在しない状態で、SimpliVity上にArbiter VMを作成することは不可能です(鶏と卵の矛盾)。

さらに、Arbiterはスプリットブレインを防ぐ「審判」の役割を果たすため、自身が判定するストレージ基盤の内側に同居させることは絶対的な禁忌です。

ジレンマ2:VME GUIから作ると高額な有料ライセンスが請求される

では、Arbiterはどこに配置すべきか? 答えは VME Managerアプライアンスが稼働している外部管理ホスト(KVMベース)です。

しかし、ここでVME ManagerのWeb GUIコンソールから管理ホストを正式登録してVMを作成しようとすると、管理ホストの全物理CPUコアがVMEの有料ライセンス対象としてカウントされてしまいます! わずか2コアの軽量なArbiter VMのために高価なライセンスを追加購入するのは現実的ではありません。

flowchart TD
    A["顧客要望: 『新規SimpliVityサーバーにArbiterも乗せて』"] --> B["ジレンマ: クラスタ展開前にArbiterが必須(鶏と卵)"]
    B --> C["解決策: 外部管理ホスト(VME Managerホスト)に配置"]
    C --> D{"VME ManagerのGUIから作成する?"}
    D -- "YES" --> E["❌ 警告: ホスト全CPUコアにVMEライセンス課金が発生!"]
    D -- "NO: エンジニアの現場ノウハウ" --> F["✅ KVM CLI(virt-install) + VNCでライセンス課金ゼロ構築!"]

2. 16年目エンジニアの実践的解決策:KVM CLI + VNCの組み合わせ

解決策は非常にシンプルです。
VME ManagerホストのOS(BaseOS)は 標準のLinux KVM / libvirt基盤です。

VME GUIを経由せず、ホストのCLIレベルで直接 virt-install コマンドを実行してKVM仮想マシンを生成すれば、VMEのライセンス管理対象に一切含まれません。OSインストール画面は virsh vncdisplay とVNCクライアントを利用して操作すれば、わずか10分でライセンス費用ゼロの独立したArbiter VMが完成します。


3. 実践手順1:Ubuntu 22.04 LTS ISOの配置

cp ubuntu-22.04.5-live-server-amd64.iso /var/lib/libvirt/images/
ls -lh /var/lib/libvirt/images/

4. 実践手順2:virt-install によるVM作成

mkdir -p /var/morpheus/kvm/vms/arbiter
vi /root/create_arbiter.sh
#!/bin/bash
sudo virt-install \
  --name arbiter \
  --ram 4096 \
  --vcpus 2 \
  --cpu host-passthrough \
  --disk path=/var/morpheus/kvm/vms/arbiter/arbiter.qcow2,size=40,format=qcow2,bus=virtio \
  --cdrom /var/lib/libvirt/images/ubuntu-22.04.5-live-server-amd64.iso \
  --network network=Management,model=virtio \
  --graphics vnc,listen=0.0.0.0,password=P@ssw0rd \
  --boot uefi \
  --noautoconsole \
  --autostart

スクリプトを実行します:

sh -x /root/create_arbiter.sh

5. 実践手順3:VNCによるOSインストール

virsh vncdisplay arbiter
# 出力が :1 の場合、ポート 5901 で待受中

VNCクライアント(MobaXterm等)から 管理ホストIP:5901 に接続し、固定Management IPを設定してUbuntuインストールを完了します。


6. 実践手順4:自動起動設定とVM起動

virsh autostart arbiter
virsh start arbiter

7. 実践手順5:シリアルコンソール(ttyS0)の有効化

Arbiter VM内部の /etc/default/grub で GRUB_CMDLINE_LINUX="console=ttyS0" を設定し sudo update-grub を実行します。以降はホスト端末から virsh console arbiter で直接ログイン可能です。


8. 実践手順6:HPE SimpliVity Arbiterパッケージの導入

sudo dpkg -i ./svtarb_6.0.0.39_amd64.deb
sudo systemctl status svtarb

まとめ

  1. Arbiterの独立性: SimpliVityクラスタ外部の管理ホストに配置してクォーラムの健全性を維持。
  2. ライセンスの節約: KVM CLI(virt-install)を活用することで、VMEの不要なCPUコア課金を完全回避。
  3. 完璧な事前準備: 事前にArbiter IPを準備しておくことで、SimpliVity 2ノードクラスタの初期展開がノーエラーで完了します。